第7波を受けて振り返る、新型コロナウイルス感染症の流行

全国の新規陽性者数に対する重傷者率の推移(男性)社会

日本で新型コロナウイルスの第7波が来ていますが、これを機に過去の波を振り返りつつ、参考となるデータを確認していきます。

新型コロナウイルス感染症について

コロナウイルスとは

コロナウイルスにも様々な種類があり、風邪程度の症状しか出ない種類もあります。2019年末に中国武漢市で発見されたウイルスは、日本では一般的に「新型コロナウイルス」と呼ばれていますが、正式には「SARS-CoV-2」と呼ぶようです。なお、2002年頃に流行した「SARS-CoV」とは別物です。

症状

国立感染症研究所のページから、そのまま引用します。

高齢者や心臓病、糖尿病等の基礎疾患を前もって患っていた人では、重症の肺炎を引き起こすことが多いが、20歳から50歳代の人でも呼吸器症状、高熱、下痢、味覚障害等、様々な症状が見られる。

引用元:国立感染症研究所

感染経路

①エアロゾル感染、②飛沫感染、③接触感染 が確認されています。

検査方法

現在の感染状況を調べる検査には、ウイルスの遺伝子が体内に含まれるかを調べる「PCR検査」と、ウイルス特有のタンパク質(抗原)を調べる「抗原検査」があります。他に、過去に感染したかを調べる「抗体検査」があります。

検査方法の比較表

なお、抗原検査はPCR検査より精度が劣るものの、15分ほどで検査結果が出るため利用されやすくなっている印象があります。一方で、国の承認を受けていない抗原検査キットも市場に出回っており、消費者庁が注意喚起をしています。

濃厚接触者の該当基準

明確な基準はなく、目安となる考えに基づいて保健所が判断するようです。次の内容は、厚生労働省のQ&Aから抜粋したものです。

新型コロナウイルス感染者から、ウイルスがうつる可能性がある期間(発症2日前から入院等をした日まで)に接触のあった方々について、関係性、接触の程度などについて、保健所が調査(積極的疫学調査)を行い、個別に濃厚接触者に該当するかどうか判断します。

なお、15分間、感染者と至近距離にいたとしても、マスクの有無、会話や歌唱など発声を伴う行動や対面での接触の有無など、「3密」の状況などにより、感染の可能性は大きく異なります。そのため、最終的に濃厚接触者にあたるかどうかは、このような具体的な状況をお伺いして判断します。

法律による位置付け

新型コロナウイルス感染症は、『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法と称す)』において、当初は「指定感染症」に分類されていました。

これは、令和2年1月28日に施行された「新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令」によるものです。同政令の第1条は次の通りです(下線は筆者が加筆)。

(新型コロナウイルス感染症の指定)
第一条 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。次条及び第三条(同条の表を除く。)において単に「新型コロナウイルス感染症」という。)を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「法」という。)第六条第八項の指定感染症として定める

引用元:e-Gov法令検索

しかし、この政令が適用されるのは1年間とされていました。その後、令和3年2月13日に感染症法が改正され、現在(令和4年8月時点)では「指定感染症」ではなく「新型インフルエンザ感染症」に分類されています。感染症法の第6条から一部抜粋して引用します(下線は筆者が加筆)。

(定義等)
第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。
(省略)
 この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
(省略)
 新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

引用元:e-Gov法令検索

ネットで検索すると、改正前の記事では「指定感染症」扱いになっていると思います。しかし現在は、上述の通り感染症法上では「新型インフルエンザ等感染症」扱いになっているので、混乱しないように注意が必要です。

法律に基づく対処

緊急事態宣言

現在は、『新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法と称す)』の第32条で、次のように定められています(下線は筆者が加筆)。

(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
第三十二条
 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。

 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
 前項第一号に掲げる期間は、二年を超えてはならない

引用元:e-Gov法令検索

なお、政府対策本部長は、内閣総理大臣とすることが閣議決定されています緊急事態宣言を決定(公示)できるのは、内閣総理大臣ということですね。

まん延防止等重点措置

同じく、特措法の第31条4項で、次のように定められています(下線は筆者が加筆)。

(新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置の公示等)

第三十一条の四 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章及び次章において同じ。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。

 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき期間
 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき区域
 当該事態の概要
 前項第一号に掲げる期間は、六月を超えてはならない

引用元:e-Gov法令検索

緊急事態宣言が全国的なまん延を意識しているのに対して、まん防では特定の区域でのまん延を防止することを目的としています。適用期間も2年と6ヶ月で差がありますね。

夜間の外出自粛要請や営業の時短要請等

都道府県対策本部長(都道府県知事)には、特措法の第24条9項において、次のように権限が与えられています(下線は筆者が加筆)。

(都道府県対策本部長の権限)
第二十四条
(省略)
 都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる
引用元:e-Gov法令検索
なお、都道府県対策本部長を都道府県知事とする定めは、同法23条に書かれています。
(都道府県対策本部の組織)
第二十三条 都道府県対策本部の長は、都道府県対策本部長とし、都道府県知事をもって充てる。
引用元:e-Gov法令検索

 

また、緊急事態宣言が発出された場合には、同法の第45条2項において、施設の利用や催し物の開催に対して制限もしくは停止を要請する権限も与えられています。

(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条
(省略)
 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項及び第七十二条第二項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる
引用元:e-Gov法令検索

感染状況のデータ

国内の状況

厚生労働省が、Webサイト『データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-』にてデータを公表しています。次のようなグラフを見ることができます。

データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-

これら3種類のデータ以外に、重症者数など他のデータも見ることができます。また、各グラフ右下の「オープンデータ」から、CSV形式のデータをダウンロードすることもできます。

同ページのグラフでは、年代別のデータが週別(直近1週間)で図示されています。そこで、オープンデータをExcelで整理して、年代別のデータの推移を次の通りグラフにしてみました。

新規陽性者数の推移

全国の新規陽性者数の推移(男性)

全国の新規陽性者数の推移(女性)

第6波(オミクロン株)、第7波と、それ以前よりも新規陽性者数が増えています。性別による差異はそこまで見られません。

ただし、ワクチン接種者が増えるに従い、政府や自治体による行動制限も緩和されています。そのため、新規陽性者数の増加率は、ウイルスの株ごとの感染力の差をそのまま反映しているわけではないと考えられます。例えば、20〜59歳では、オミクロン株の新規陽性者数はデルタ株の約3倍ですが、オミクロン株がデルタ株より3倍感染しやすいとは言えません。

また、グラフで年齢を3区分していますが、それぞれの母体数(人口)に差があるため、20歳〜59歳が感染しやすいという解釈もできません。年代による影響の差を見るためには、10万人あたりの新規陽性者数を比較する必要があります。

重症者数の推移

全国の重症者数の推移(男性)

全国の重症者数の推移(女性)

20歳〜59歳はデルタ株のピークが目立ち、60歳以上ではオミクロン株のピークが目立ちます。また、男性の方が重症者数が多いです。ただし、単に性別による差なのか、職業や役職など間接的な要素が影響しているのかは、このグラフだけでは判断できません。

新規陽性者数に対する重症者率

全国の新規陽性者数に対する重傷者率の推移(男性)

全国の新規陽性者数に対する重傷者率の推移(女性)

新規養成者数に対する重症者率を見ると、高齢者が重症化しやすいと言われる認識と一致しています。

一方で、デルタ株とオミクロン株のピークに注目すると、新規陽性者数はオミクロン株の方が多かったのに対して、重症者率はオミクロン株の方が低くなっていることもわかります。

なお、重症者数のピークは新規陽性者数のピークより遅れて現れる傾向にあります。そのため、第7波の重症者率は2022年8月のデータが公表されるまではなんとも言えません。

ちなみに、ウイルスの感染力は重症化率に反比例するという見解もあります(宿主が死亡すると、ウイルスは他者に感染できないため)。

海外との比較

例えば、『Our World in Data』で日本を含む各国のデータを比較できます。

100万人あたりの新規陽性者数

100万人あたりの新規陽性者数

出典:Our World in Data 

日本でオミクロン株が流行した2022年2月頃を見ると、日本ではピークが800人ほどであるのに対し、フランスでは5,000人を上回っています

直近の2022年7月のピークは、日本が急増しているのに対し、他の国では減少に向かっています

なお、ここでは日本だけ色付きで表示していますが、Webサイトでは各国のデータも色付きで表示できます。

100万人あたりの死者数

100万人あたりの死者数

出典:Our World in Data 

100万人あたりの死者数は、諸外国と比べると日本は低く抑えられているように見えます。なお、2021年2月頃にピークが高く表示されているのはイギリスで、18人を上回っています。

おわりに

新型コロナウイルスが流行し始めてから2年以上経ちましたが、その分データも蓄積されてきました。SNSも含め様々な情報が溢れてはいますが、公開されているデータや法律も参考にしつつ、不確かな情報に振り回されないように気をつけていきたいです。

また、今後の動向を見る際には、新規陽性者数だけでなく重症者率も見ながら、冷静に状況を理解するように努めたいです。

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