今の日本では、公的医療保険制度のおかげで、医療機関での診療を3割以下の費用で受けることができます。誰もが利用しているこの制度ですが、会社員の健康保険と自営業の国民健康保険の違いがよくわからなかったので調べてみました。
なお、本記事では健康保険と国民健康保険の主な違いを整理することを目的とします。制度の詳細については立ち入らないので、他のWebページなどをご参照ください。

公的医療保険の概要

公的医療保険とは

先述の通り、私たちは医療機関での診療を3割以下の費用で受けることができます。これは、私たちが公的医療保険という強制保険に加入して保険料を支払っていることで保障されています。
日本国憲法の第25条(いわゆる生存権)で述べられている、「健康で文化的な最低限どの生活を営む権利」を国民が行使できるようにするため、公的医療保険制度が法律で定められています。

制度が作られた背景

1955年ごろまでは、農業従事者や零細企業の社員など、公的医療保険に加入していない人が3000万人ほどいたようです。医療保険に加入していない人が病気になった場合は、医療機関での診療費用の全額を自己で負担しなければなりません。
終戦後の1947年に憲法が施行され、生存権に基づき国民のすべてが医療期間での診療にかかる費用の負担を軽減できる制度を作ろうという動きになりました。
そして、1958年に国民健康保険法が制定され、国民皆保険が実現します。

公的医療保険の分類

医療保険には種類があり、下記のように分類されます。

保険の名称 主な対象者
健康保険 会社員、事業者
共済保険 公務員
船員保険 船員
国民健康保険 上記以外の75歳未満の人(自営業、フリーターなど)
後期高齢者医療制度 75際以上の人

いずれも診療時の自己負担額は3割以下ですが、保険の種類によって保険料や保障内容が違います。本記事では、これ以降は健康保険と国民健康保険のみ対象とします。

健康保険

対象者

被保険者は、主に会社員や事業者です。
保険者は、全国健康保険協会(以下、協会けんぽと称します)と、健康保険組合です。協会けんぽは主に中小企業が加入しており、健康保険組合は主に大企業やグループ会社が加入しています。
協会けんぽと健康保険組合で、保険料と保障内容が違います。詳しくは後述します。

保険料

算出方法

[標準報酬月額]×[保険料率]によって算出します。式はシンプルですが、見慣れない用語が出てきました。
まず、報酬月額というのは、基本給に残業手当や通勤手当なども含めた総支給額のことです。このため、手取りの金額よりも高額になります。
標準報酬月額というのは、基本的に4〜6月の報酬月額の平均値で、9月から1年間は同じ標準報酬月額が適用されます。標準報酬月額は年金の算出でも用いられます。日本年金機構の説明がわかりやすかったです。

また、保険料率は、協会けんぽの都道府県支部ごと、健康保険組合ごとに決められています。健康保険法の第160条1項および13項によると、設定できる範囲は3〜13%のようです。

負担割合

保険料の半分は会社が負担してくれます(健康保険法の第161条1項)。ただし、健康保険組合の場合は、負担割合が半々でなくても良いことになっています(健康保険法の第162条)。三菱健康保険組合の場合、保険料率8.9%のうち、事業主が5.7%分(約64%)を負担してくれるようです。

国民健康保険にないメリット

まず、先述の通り保険料の半分は会社が支払ってくれます。
また、被保険者の扶養家族に対しても保障が適用されます。一方、国民健康保険には扶養の制度がないため、家族の人数に応じた保険料を支払わなければなりません(後述)。

健康保険組合のメリット

さらに、健康保険組合には付加給付の制度があります。これは、組合ごとに保障内容を増やしていいよ、という制度です。三菱健康保険組合の場合、入院などで自己負担の3割分だけでも高額になった場合でも、最終的な自己負担額が25,000円になるように付加給付されるようです。

国民健康保険

対象者

被保険者は、自営業者やフリーターなどです。
保険者は、都道府県および市町村です。

保険料

算出方法

国民健康保険の保険料は、[所得割額]+[均等割額]で算出されます。所得割額は世帯収入に比例し、均等割額は世帯人数に比例します。それぞれの算出方法が複雑なので、順に説明します。
まず、所得割額は[基準額]×[保険料率]によって算出されます。健康保険の標準報酬月額が手当などを含めた総支給額であるのに対して、基準額は所得をベースに算出します。保険料率は市町村ごとに違います。
次に、均等割額は[世帯人数]×[単価]によって算出されます。単価も市町村ごとに違います。会社員は健康保険で子どもを扶養家族に指定できますが、均等割額は子どもの人数分支払額が増えます。
詳しい算出方法を知りたい方は、下記のページを参照してください。

上限額

被保険者が多いと保険料が高くなってしまいますが、上限額が設定されています。この上限額も市町村によって違います。

減免制度

災害や倒産などで保険料の支払いが難しい被保険者には、減免制度が適用される場合があります。これも市町村によって違います。

健康保険と国民健康保険の比較

最後に、健康保険と国民健康保険の違いを比較したいと思います。

制度のわかりやすさ

保険料の算出方法を比べると、健康保険の方がシンプルでわかりやすいです。標準報酬月額の算出がやや面倒ですが、国民健康保険の所得割額と均等割額に比べたら簡単です。ホームページも協会けんぽや健康保険組合の方がわかりやすいように思います。

メリットの大きさ

健康保険は以下のメリットが大きいですね。

  • 保険料の半分は会社が負担してくれる
  • 1人分の保険料で、扶養家族も保障される
  • 健康保険組合によっては、さらに付加給付制度が利用できる

まとめ

長くなりましたので、要点を表に整理します。

保険の名称 主な対象者 保険料の
算出方法
特徴
健康保険 会社員、
事業者
[標準報酬月額]
×[保険料率]
  • 保険料の半分は会社が負担してくれる
  • 1人分の保険料で、扶養家族も保障される
  • 健康保険組合によっては、さらに付加給付制度が利用できる
  • 保険料の算出方法が比較的シンプル
国民健康保険 自営業者、
フリーターなど
[所得割額]
+[均等割額]
  • 保険料は原則として全額自己負担
  • 扶養制度がなく、子どもの数だけ保険料が高くなるが、上限額がある
  • 災害などで支払いが難しい場合は、減免制度が利用できる場合がある
  • 保険料の算出方法が複雑