発酵食品と菌

日本には納豆や日本酒など多くの発酵食品があります。原料を発酵させる過程で納豆菌や麹菌を使いますが、食品加工に菌を使っても大丈夫なのでしょうか。
そもそも菌についても発酵についても理解できていないので、食品に関する菌について調べてみました。

菌とは

厳密な定義ではありませんが、光合成を行わず、分泌した消化酵素で栄養分を分解してから内部に取り込むのがおもな特徴のようです。
ヒトも光合成は行いませんが、菌とは異なり栄養分は体内の消化酵素で分解しています。

発酵とは

発酵とは、生物が酸素を使わずに有機物を分解し、エネルギーを生成することのようです。ちなみに、酸素を使う場合は呼吸です
呼吸も発酵も、生物が自身の生存のために必要なエネルギーを生成することが目的です。ヒトの体内でも、酸素を使わないエネルギー生成(つまり発酵)は行われています。
菌が発酵するとエネルギーの他に、原料と異なる有機化合物が生成されます。発酵食品では、菌の発酵で作られる有機化合物を利用しています
なお、発酵によって分解できるのはブドウ糖のような単糖類なので、デンプンなどの多糖類から発酵食品を作る場合には、あらかじめブドウ糖まで分解しておく(糖化と呼ぶ)必要があります。

腐敗とは

酸素を使う場合も使わない場合もあると思いますが、生物が有機物を分解してエネルギーを生成する過程で、ヒトに有害な有機化合物を生成することを指すようです。菌にとっては発酵も腐敗も同じようなものですが、生成物がヒトにとって有害なら腐敗、有益なら発酵と呼んでいるようです。

発酵の種類

いろいろありますが、この記事ではアルコール発酵と乳酸菌発酵について取りあげます。

アルコール発酵

化学反応

アルコールを生成する発酵を指します。反応式は次のようになります。
\begin{eqnarray}
C_6H_{12}O_6 \rightarrow 2CO_2 + 2C_2H_5OH + 2ATP
\end{eqnarray}
左辺の\(C_6H_{12}O_6\)が原料となるブドウ糖です。中間的な化学反応を経て、最終的に右辺の化合物が生成されます。
右辺の\(C_2H_5OH\)はエタノール(アルコールの一種)です。ATPはアデノシン三リン酸(Adenosine tri-phosphate)といい、菌自身のエネルギーとして利用されます(ヒトなどの生物もATPをエネルギーとして使っています)。
ATPの分子式は\(C_{10}H_{16}N_5O_{13}P_3\)です。構造式を調べた方がわかりやすいのですが、アデニンという塩基に糖とリン酸が結合した化合物です。


ATPの要素である窒素(N)とリン(P)が左辺にないので、菌自身や周辺環境から供給する必要があります。窒素はアミノ酸(\(-NH_2\)と\(-COOH\)を含む有機化合物の総称)やアンモニア(\(NH_3\))などが利用されるようです。

アルコール発酵の例

ブドウからワインを作る際に、アルコール発酵が利用されています。
ブドウの果汁にはブドウ糖が含まれているので、酵母(菌の分類の一種)が混ざると発酵してエタノールが生成されてワインになります(売られているワインはもっと手を加えていると思いますが)。
日本酒の場合は、原料の蒸し米に含まれるデンプンをブドウ糖まで分解(糖化)してから、アルコール発酵を行います。糖化は麹菌の酵素によって進み、アルコール発酵は別の酵母によって進むようです。

乳酸発酵

化学反応

乳酸\(CH_3CH(OH)COOH\)を生成する発酵を指します。反応式は次のようになります。
\begin{eqnarray}
C_6H_{12}O_6 \rightarrow 2CH_3CH(OH)COOH + 2ATP
\end{eqnarray}

乳酸発酵の例

牛乳からヨーグルトを作る際に、乳酸発酵が利用されています。
牛乳には乳糖\(C_{12}H_{22}O_{11}\)が含まれています。乳酸菌が混ざると、乳糖がブドウ糖に糖化され、ブドウ糖が発酵して乳酸が生成します。
また、乳酸菌は牛乳に含まれるタンパク質をアミノ酸に分解する酵素も持っているそうです。乳酸は味覚としては酸味に関わりますが、分解されたまま残ったアミノ酸が乳製品の風味を生むそうです。

おわりに

食品に関する菌はたくさんありますが、取り上げるとキリがないのでここまでにします(というか調べきれない)。
ただ、基本的な発酵の概念と食品への利用については理解できたと思います。例えば漬物は蓋をして密閉しますが、発酵させるために酸素に触れないようにさせる必要があるのかと納得しました。また、必要な菌を繁殖させることで、人体に有害な雑菌が繁殖しにくくなるようです。
はじめは日本食によく使われる味噌とかを例にあげるつもりでしたが、発酵する菌を加えるまでに原料を色々と加工していることがわかったので、比較的プロセスが単純なワインとヨーグルトを例にあげました。日本の発酵食品の製造工程は、Webサイトで詳しく書かれているメーカーも多いので、そちらが参考になると思います。
食品に使われる菌は人体に有益なものですが、人体に有害な菌も存在します。有害な菌は食品に混入しないように食品衛生法などで管理されていますが、雑菌の混入によって腐敗が進みやすい食品には消費期限が設定されています。

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