著作権の侵害

生活
rumoさんによる写真ACからの写真

ブログを書いたりホームページを作ったりしていると、著作権についてある程度の知識は持っておきたいと思うようになります。そこで、著作権について調べたことを、著作者と利用者それぞれの立場において整理したいと思います。

著作権の目的

著作権法の第一条には、次のように書かれています。

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

主な目的は2つあります。著作者の権利を保護することと、文化の発展に寄与することです。
著作者の権利を保護するのが原則ですが、これを徹底すると著作者本人以外は著作物を一切利用できなくなってしまいます。例えば、ブログに参考書籍のリンクを貼るたびに、著者に許可を得なければならなくなります。しかし、それでは文化の発展が妨げられてしまうため、例外として著作者の許可を得ずに利用しても良い場合についても定められています。
つまり、「著作者の権利の保護」と「文化の発展への寄与」は相反する面があります。そのため、著作権の侵害について考える場合は、この両者のバランスが重要です。この点を意識すると、著作権の侵害に該当するかを、ある程度は判断できると思います。

利用者として気を付けること

著作者の権利を侵害していないか

著作物の複製

CDや書籍を第三者が勝手に複製して販売した場合、著作者が得るはずだった利益の一部が第三者に奪われてしまいます。そのため、著作物を複製する権利は、原則として著作者だけに与えられています。

(複製権)
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

有料メルマガの内容を勝手にコピーしてSNSなどで公開するのも、著作者が得るはずだった利益の損失につながるため(無料で公開されていたら購読する必要がないため)、複製権の侵害になると思われます。

著作物の改変

制作して販売した写真やイラストが無断で加工されると、著作者の創作意図と異なる形で伝達されてしまいます。加工によって構図が変わると、著作者の評価が下がってしまう可能性もあります。このようなことを防ぐため、同一性保持権が定められています。

(同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

条文では題号についても触れています。例えば書籍を出版するにあたり、編集者が著者の了承を得ずにタイトルだけ変更するのも、同一性保持権の侵害に当たると思われます。

文化の発展を妨げていないか

根拠を示すための利用

本記事でも著作権法の内容を引用していますが、説明のために著作物の一部を利用することは許されています。引用ができないと根拠となる出典の内容を示すことができず、出典資料も手元に用意しなければ記事の内容が理解できないという事態になりかねません

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

そもそも著作権法は著作物ではなさそうですが(ルールであり、創造性がないので)。私の場合はブログなどの記事を引用することの方が多いです。ただし、引用した箇所と引用元を示さないと、著作権(おそらく複製権)の侵害になります。

フリマアプリの商品写真

フリマアプリの商品自体も著作物に該当する場合があります。しかし、写真が掲載できないと商品の特徴や状態が伝わらないので、買い手はつきにくいと考えられます。
そのため、フリマアプリに商品写真を掲載することは許されています。ただし、写真自体が著作物になるので、他者が撮影した写真を無断で使用すると複製権の侵害になります。

写真の背景に写り込んだ著作物

街中の風景を撮影した写真には、広告のポスターやモニュメントなどの著作物が写り込む場合があります。写真に写り込んだすべての著作物を取り除くのは難しいので、著作物が被写体の大部分を占めていなければ、著作権の侵害にはならないようです

私的使用のための複製

ソフトウェアのダウンロードも著作物の複製に該当しますが、私的使用のためなら著作権の侵害にはなりません。写真の焼き増しやCDのダビングも同様です。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

e-Gov 著作権法より引用(「次に掲げる場合」の内容は長いため省略)

営利目的でのダウンロードは原則として複製権の侵害になります。ただし、ソフトウェアの場合は販売元がライセンス契約を謳っている場合が多いです。著作者としては、著作権(複製権)の侵害を防ぐよりも、ライセンス契約の違反を防ぐ方が手間が少ないからだと思います。
似たような例として、美術館やコンサートで写真を撮るのも、私的使用であれば著作権法上の問題はありません。しかし、本当に私的使用に留まるかを判断するのは難しいので、チケットや館内で撮影禁止と謳っている場合が多いです。この場合、私的使用の撮影と言い張られても、入場規約の違反を理由に退場させることができます。

楽曲の使用

カラオケ、喫茶店、結婚式場、動画のBGMなど、楽曲は様々なところで利用されます。そのため、利用するたびに著作者(作詞家や作曲家など)に許可を申請してしまうと、利用者も著作者も大きな負担を強いられます
このため、楽曲についてはJASRACという社団法人が、著作者から著作権の管理を委託されていることが一般的のようです。下記リンク先に、楽曲使用の手続きについて書かれています。

著作者として気を付けること

著作者としての権利を守る

著作物の利用範囲を明記しておく

日本では手続きをしなくても著作権が適用されますが、トラブルを減らすためには自分でも著作物の利用範囲を謳っておいた方がよさそうです(写真やイラストをWebに公開する場合は、商用利用は禁止するなど)。フリー素材のプラットフォームなどに投稿した場合は、原則としてそのプラットフォームで定められている利用範囲が適用されます。
個人で運営しているホームページで著作物を公開する場合は、利用範囲も独自に決めることになりますが、クリエイティブコモンズのように広く知られているルールに当てはめるのがわかりやすそうです。

著作物の作成を委託された場合

ホームページやイラストの製作を委託された場合、最終的には発注元の企業などに著作物を納品することになります。この場合、製作者ではなく発注者が著作権を有することが原則のようです。

(職務上作成する著作物の著作者)
第十五条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

これは発注者の利便性を考慮しているのだと思います(社内での複数人利用や改変のたびに製作者に問い合わせるのは大変なので)。そのため、製作者が著作物を他でも利用したいのであれば、製作者が著作権を有することを契約内容に含める必要があります。場所や期間を限定して使用を許可する契約も可能です。
特に、発注者に納品する著作物がソフトウェアの場合は、利用可能な人数や範囲(社外など)によって、発注者にとっての価値が大きく変わります。一人の利用を想定した価格で複製権も譲渡してしまうと、得られるはずの利益を失う可能性があります。複製権を譲渡するか否かは慎重に考えた方が良さそうです。または、あらかじめ複数人利用を想定した価格で交渉するか、別途ライセンス契約の内容を明記する対応を考えるのもよいと思います。

著作物を広く利用してもらう

利用範囲を厳しく制限すれば著作者の権利を守れますが、制限を緩くすれば著作物を広く利用してもらいやすくなります。利益を得るよりも、著作物を周知してもらいたい場合は、自由に利用してもらって構わない旨を明記しておくと良さそうです。ただし、キャラクターのイラストなどは加工によって印象に悪影響を与えかねないので、複製はOKだけど加工はNGとするなどの考慮が必要です。

他者に製作を委託した著作物

先ほどとは逆に、企業が他者に著作物の製作を依頼した場合を考えます。製作者が著作権を持つ場合、著作物を複製したり改変するたびに製作者の許可を得なければなりません。著作物を複製したり改変する予定がある場合は、著作権を製作者から譲渡してもらう旨を契約内容に明記しておいた方が良さそうです。
価格交渉が折り合わない場合は、利用範囲(人数、場所、期間)を制限する条件を契約内容に加えることも検討するとよいでしょう。もちろん買いたたきなど無理を強いる契約にしてはなりませんが(著作権以外の面で訴えらると思います)。
基本的には、契約内容に明記していないものについては、著作権法の原則が適用されると考えておけばよいと思います。

おわりに

権利の保護と文化の発展のバランスを意識すると、著作権法の考え方は納得できるものが多いと感じました。関連書籍を読むと、ブログやYouTubeなどを想定した具体的な事例も書かれています。文章や写真などを発信する機会が多い方は、複製権、同一性保持権、公衆送信権の理解が役に立つと思います。投稿動画に楽曲や映画を使用する方は、演奏権や送信可能化権なども知っておくとよさそうです。


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